*平成25年のごあいさつ*

 昨年一年は原発事故の影響に翻弄された一年でした。
 それまで積み上げてきた農業の形が根本から崩されてしまったようで、暗闇の中を手探りするような一年でした。全国に薄く広く広がっていく放射能汚染の現実を前にして、果たして有機農業を続けていくことにどれだけの意味があるのだろうかと、無力感、絶望感と戦った一年でした。年が明けた今もまだ出口を見つけることが出来ずにいます。
 
 それにしても、百年続けられる農業を目指して始めた有機農業が、これほど脆いものだったとは。
 たった一度の原発爆発で、広大な国土に広がってしまった放射能汚染。そしてそれは何十年、何百年、長いものは何万年も放射能を出し続けます。とても一農家が太刀打ちできるものではありません。
 放射能の影響はまだまだこれから何十年も続くというのに、政治やメディアが原発維持〜推進の方向で世の中を引っ張っていこうとしていることが信じられません。
 「臭いものにフタ」どころか、フタを開けたまま出てきた臭いを「これは臭くないんだよ」と言っているような、端から見ればずいぶんと滑稽なことが、平気で行われています。
 そして昨年末の衆議院選挙では原発を推進する政党が大差で与党に返り咲きました。福島第一原発は今も毎日膨大な放射能をばらまき続けています。そして、そのまま原発政策は推進されようとしています。
 
 昨年聞いた言葉の中でとても印象に残っているのが「私たちは、一見平和と見える「戦前」に生きているかも知れない」という言葉です。
 戦前なのかどうかは、実際戦争が起こった後でないと誰にも分かりません。しかし、確かに世の中の流れがそっちの方向に動いているように思えてなりません。
 
 それはさておき、今年は家の農業をどう進めていったらいいのか。
 まずは野菜を少し増やしていこうかなと思っています。田んぼの有機栽培ももう少し増やしたいけれども、需要の縮小した今はちょっと難しいでしょうか?
 今も暗中模索の状態で、明るい光が何も見えず、放射能容認の世論に流されそうになってしまいます。毎年、年の初めにどういう一年にしようか書いているのですが、今年はどうにも見当がつきません。いったい何をどうしたらいいのやら。もっと明るい前向きなことを書こうと思ったのですが、出来ませんでした。
 「諦めるな」ってことだけ、自分に言い聞かせてなんとか一年を乗り切ろうと思います。
 

(2013年1月)

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