*お酒とお米*

 何をかくそう私は日本酒党です。
 二十代前半の頃、夏にビールを飲み過ぎて胃をこわした事があります。それでも酒を止められずに、体をダマしダマし飲んだ酒の中で、日本酒が一番私の胃に優しく、皆が言うほど二日酔いもしませんでした。そんなわけで今日まで日本酒を飲み続けています。
 それからもう一つ日本酒を大好きになるきっかけがありました。
 二十代半ば、私は蔵王スキー場のとあるロッヂに住み込みで働いていました。
 ロープウェイを上った山の上にある宿だったので、夜は遊びに行ける場所もありません。当然、毎晩部屋で酒盛りとなるのですが、ある時スキーのインストラクターの方から飲ませていただいたお酒。たしか山形県高畠町の酒でしたが、銘柄はよく覚えていません。ラベルにはデカデカと「純米酒」とだけ書いてあった記憶があります。
 私はその酒を飲んでびっくりギョーテン。
 おいしいんです!精米したてのお米の香りがするんです。
 私はこの時初めて日本酒はお米から作るんだなあ、と実感しました。そして、そのころから銘柄や種類を気にして飲むようになったのです。
 ふだん私が飲むお酒はほとんど地元山形県内のお酒です。やはり地酒というものはその土地の気候風土の中で飲むのが一番旨いと思うからです。というか地元から攻めていこうとして、まだ地元を征服しきれていないだけだったりもします。
 吟醸酒も好きですが、やはり純米や本醸造の「お米」を感じさせるお酒が好きです。とくに労働の後は堪えられませんね。口に含んだとき体中に染みわたるあのやさしい幸福感。うう、たまらん。
 かくして私は今日もお米を作り、お酒を飲むのです。

(1998年7月)

田植えを待つ田んぼ
田植えを待つ田んぼ

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