稲作農家の春は目が回るほど大変です。雪がとけたら育苗ハウスの準備、床土に肥料をまぜて、それを苗箱につめる。さらに塩水選をして、真水に浸していた種籾をそれにまき、育苗ハウスにならべる。田んぼでは元肥をまいて、田起こし、代かき。それと並行して育苗ハウスの水や温度の管理。そしてクライマックスは田植え。それで終わりではありません。後片付けがまた一仕事です。
これらの仕事が二ヶ月の間、一日のヒマもなく次々と巡ってくるんです。農家は心身共に疲れ果ててしまいます。
六月に入り、仕事が一段落すると、一気に生活のリズムが緩やかになってきます。
晴れたら仕事、雨が降ったら休み、といった具合で実にのんきなもんです。
梅雨にはいると、毎日ブラブラ楽しいな。
とは言っても、そうのんびりとばかりはしていられません。大豆やらなにやら他の仕事も入ってきますし、無農薬米なんかを作っていると、雑草取りの最盛期です。雨が続いて仕事が遅れると、晴れた日はまた大忙し。結局、気持ちはのんびり体は大忙しってところ。
私はオートバイであちこちブラブラするのが好きなんですが、米農家なんかやっていると、春と秋の一番気持ちいい季節が、一番いそがしくて、オートバイどころじゃない。そしてここ新庄の冬は、雪が多くてとてもオートバイは乗れない。さらに他の季節も、晴れたら仕事、雨が降ったら休みといった具合で、オートバイを乗るにはこれまたきびしい条件。しかも雨の日に太陽の国イタリア製のオートバイなんか乗ってた日にゃー、いつ壊れるかわかったもんじゃない。
まったくこんな不効率な趣味もないもんだ。
一度でいいから、陽光輝くゴールデンウィークにオートバイで遠出してみたいなー。
(1999年6月)
六月の田んぼに蛙