*二日酔いとカレーライスの関係*

 春です。春は気持ちいい季節ですねえ。特に朝、布団にくるまってボーっとしているのはこたえられません。まさにこの世のゴクラクです。それを毎日体験できるのですから、まったく春とはすばらしい季節です。
 しかし、しかし、北国の農村の春は大変なこともあるのです。なにせ雪に埋もれた長い冬から解放され、すべてが一度に動き出すのです。そして物事の始まりに欠かせないのが「酒」。農協関係やら消防団やらその他、地区のもろもろの組織、団体の飲み会が連日続きます。そして間髪を入れず一斉に花見でまた飲み会が続きます。酒飲み自体は楽しいのですが、こうも毎日続くと、度をこしてしまうこともあります。二日酔いです。
 暖かい朝日が射し込むうららかな朝ほど二日酔いがひどく感じられます。春の二日酔いの朝は最悪です。まさにこの世のジゴクです。
 焼酎は二日酔いしにくいとかいいますが、あれはうそですね。どんな酒だろうが飲み過ぎれば二日酔いになる。私の経験からいえば焼酎の二日酔いが一番ひどい。飲み口が良くていくらでも飲める割に度数が高い。しかも度数が高いほどうまかったりする。
 そんなわけで、焼酎を飲み過ぎたときの二日酔いというのは、他の二日酔いとはカクが違う。まるで底なし沼に額の辺りまでどっぷりはまってしまったような感じです。
 酒を飲み始めた頃はずいぶんむちゃな飲み方をしたものです。
 友だちの家で朝まで飲んで(ああ、そういえば、その時も焼酎だった)次の日は立ち上がれないほどの二日酔い。確か春でした。茶の間でこたつに入り、お茶を飲んでいると、その友だちの母上が朝食にカレーライスを(なんで?)作ってくれたのです。なぜかそのカレーには、肉の代わりにちょうどいい具合に切りそろえられたカマボコが入っていました。うつろな意識にカレーの黄色とカマボコの赤が強烈に突き刺さったものでした。
 一口、二口と口に入れると、かぐわしいスパイスの香りがやさしく胃壁をなで・・・と、そんなに生やさしい二日酔いではないのです。たまらずトイレに直行しました。後に待っていたのは、遙か上空から放り出されたような脱力感。ああ、それにしてもあの日はひどかった。
 しかし、人間とは懲りないものです。あんな苦しい思いを何度くり返しても、いまだに酒を飲み続けています。ただあれ以来、二日酔いになると必ずカレーが食べたくなります。あのカレーの黄色とカマボコの赤が脳裏によみがえってくるのです。
 と言うわけで今日もまたカレーを・・・

(1999年4月)

プリントアウトして、絵手紙にどうぞ。
ガメラ・絵手紙風

 〔 戻る前へ次へ 〕