*農家でもヘビは苦手*

 東北地方といえど、五月も後半になれば結構暑い日があります。この頃一番こわいのが紫外線です。
 特に田植え作業で田んぼの真ん中にいると、田面の照り返しでさらに大変です。半日も肌を露出していると、真っ赤になってお風呂に入るのが一苦労です。
 顔や首筋は田植えが終わる頃にはもう真っ黒です。この時期、日焼けで顔が真っ黒なのはサーファーかファーマーぐらいではないでしょうか。
 田植えが終わり六月になると一番大切な作業といえば水の管理です。
 田んぼは常に水が張った状態にしておかないと、すぐに雑草が生えてきます。除草剤を散布した田んぼといえども例外ではありません。確かに草が生えにくくはなりますが、三日も土を露出していれば除草剤の効果も落ちてきます。ましてや無農薬田などは水が浅くなっただけでもう雑草の芽が伸び始めます。だから毎日の水管理にはとても神経を使います。毎日、朝晩、田んぼの畦を歩き回るわけです。
 そしてこれからの作業と言えば農薬や肥料の散布があります。
 何回も何回も田んぼの畦を歩き回らなければなりません。五月の畦には地面を這うような草ばかりだったのが、六月になると膝ぐらいの丈のある草が伸びてきて、朝はいつも作業ズボンがグショグショです。しかし畦の草はちょっとじゃまではありますがどうって事はありません。それよりも、いるんですよ畦には、ニョロッとしたやつが。そう、ヘビちゃんです。
 農家の人はヘビなんかどうって事ないだろうと思うかもしれませんが、そうでもないんですよ、これが。
 まあ、中にはヘビを見つけると大喜びで、捕まえてブルンブルン振り回すような人もいますが、私はどうも苦手です。十数年田んぼで彼らと顔を合わせているのですがいまだに慣れません。
 なにせ相手は草むらの中をはいずり回って目に付きにくいものだから、作業中にいきなりグニュッと踏んづけてしまったら飛び上がるほどビックリします。向こうもあわててニョロニョロニョロと田んぼの中に逃げ込んでいきます。お互いにビックリしているようです。
 草刈り作業中に出くわすともっと悲惨です。
 なにせやっこさん草むらをはいずり回っているもんだから、いきなり草刈り機で切ってしまうこともあります。そのまま逃げてくれればいいものを、こっちに向かってくるやつもいます。そういう場合は仕方ありません。引導を渡してしまうこともあります。
 そんなことはしたくないのですが、これが我々のさだめってやつなのです。
 しかし、いやだからといって畦を歩かないわけにはいきません。おそらく私と彼らとの戦いは終わることがないでしょう。あ〜、イヤダイヤダ。

(2000年6月)

ハルジオン
ハルジオン・四月から八月

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