*酒と農薬*

 夏です。山形の夏は暑いです。朝晩は涼しく過ごしやすい日の方が多いのですが、日中は死ぬ思いです。
 とくに私の住んでいるところは、近くに山もなければ川もない、家のまわりは田んぼだけというところですから、熱気がこもるというか、とにかく日中の暑さは半端じゃあありません。
 もちろんどんなに暑くても仕事は野外、毎日大汗をかきながらの作業です。日が暮れる頃にはもうヘトヘトで、頭に浮かぶのは飯食って寝ることだけ。毎日毎日こんな事をしていて良いのだろうか?ってな考えも浮かんできます。
 しかし苦しいことだけではありません。ささやかながら楽しみもあります。
 仕事の合間に飲む冷えた缶ビール!こいつはほんとにたまりません。毎日炎天下で仕事しているんです。これぐらいのゼイタクはあってもいいでしょう。というか夏はその一缶の冷えたビールをおいしく飲むためだけに仕事をしているのです。と、いってしまってもいいかもしれません。
 夏の仕事といえば畦の草刈り、田畑の草取り、といった単純労働(実はこれが見た目によらず重労働)。それから農薬散布があります。
 農家の仕事でなにがいやかって、夏の農薬散布ほどいやな仕事はありませんね。
 真夏だってのに長袖のシャツに帽子をかぶり、防毒マスクをして、重い散布機を背負って農薬をまき散らしながら、田んぼのまわりを行ったり来たりです。
 暑いやら、息苦しいやら。しかも農薬ってのはもちろん毒物ですから、一時間も作業をすればいかにマスクをしていたって頭がクラクラしてきます。
 こういう毒物ってのは肝臓に負担をかけるんですよね。ですから農薬散布をした日にはなるべく酒を飲まないようにしています。たまにつきあいがあって酒を飲んだりすると、必ず変な酔い方をするし、次の日に残ってしまいます。決して飲み過ぎのせいだけではないと思うのですが・・・・。
 そんなわけで一番いやな仕事でありながら、唯一の楽しみにもありつけないわけです。かといってまだまだ全部を無農薬でやるほどの技術も余裕もありませんので、しないわけにもいきません。
 あー、こんな作業から足を洗って、毎日毎日愉快に冷えた缶ビールを片手に仕事が出来るようになるのはいつのことでしょうか。
 いや、そこまで行くとちょっと行きすぎですか。

(2000年7月)

夏はビール!!!ぷは〜!
夏はビール!!

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