目が回るほど忙しい9月、10月が過ぎるとなんだか気が抜けます。
田畑は実りを終え、木々も葉を落とし、寒々しい風景が広がります。
かといって冬にはまだ間がある。11月ってのはあまり好きな季節じゃないですね。
この間、首都圏の環境保護団体の若者たちと交流する機会がありました。彼らの農業に対するイメージのの中で、とくに印象に残っている言葉が二つあります。
一つは「イキなオヤジ」、もう一つは「初めはイモ」です。
「初めはイモ」は次の機会に話すとして、「イキなオヤジ」ってのは何かというと、彼のイメージでは、農業ってのはキツくて、キタナくて、儲からない仕事で、それを金のためだけではなく、信念を持って黙々とこなす、そんなイキなオヤジがやってる仕事なんだそうです。
確かに農業って職業は何百年も昔から、キツいし、キタナいし、儲かる仕事ではないって決まっています。
それでも私が農業高校を出て、家業に就いた頃は割と上り調子で、「農家の所得を他産業並みに」とか「農家の労働時間を他産業並みに」なんてことが叫ばれていました。農業もお金のものさしによってその仕事の価値が決められていたわけです。
ところがそれから十数年、ここのところ農業情勢は厳しくなるばかり、農業のみで生計を立てるのはかなりむずかしくなってきていて、農業そのものの価値も下がる一方です。
しかし、例のバブル崩壊以後、不景気が続き、お金の持つ、物の価値を計るものさしとしての信頼性がゆらいで、他のものさしで物の価値を計る人もふえてきたようです。
たとえば、最近では不便な田舎暮らしにあこがれたり、農業をやってみたいって人たちがふえてきました。
それから趣味でハム、ソーセージ、味噌や豆腐など加工食品を手作りする人もふえているようです。
お金のものさしで計ってみると、市販の物を買ったほうが手間もかからず断然お得です。ところが他のものさしで計ってるその人たちにとっては、たとえ出来が悪くとも市販品を買うよりはるかに価値があります。
別なものさしで計ってみれば、農業って職業は、もしかしたらけっこうイケている職業なのかもしれません。
そんな別のものさしを持って農業をやっている人、それが「イキなオヤジ」なのかな?
(2000年11月)
ああ、冬になるとネギとともに・・・(合掌)