*作る・食べる*

 うちでは味噌を手作りしています。
 といっても、作り始めたのは大豆を作付けするようになったここ2,3年のことです。もちろん子供の頃はずーっと自家製の味噌だったのですが、いつの頃からか市販のものを使うようになっていました。
 昔はどこの家でも自分の家で味噌を仕込み、アンコを練り、野菜を干し、いろんな加工食品をったものです。さすがに漬け物だけはいまだに自家製が主流ですが、田舎といえども、工場で大量生産された食品が食卓にあふれるようになりました。
 確かに味噌造りなんてのは手間もかかるし、安い輸入大豆を使って大量生産された味噌を買ってきたほうがカンタンです。ことは味噌に限らず、すべてにおいてより安いもの、より便利なものってほうに流されていったような気がします。
 しかし食べ物に関してはもっと別な見方が必要じゃないかって思います。だって、人の体は食べ物でできているんですから。

 食べ物って、体にいい物だけじゃなく、体に悪い物もすべて、口から入った物は肉になったり、血になったり、体のどこか一部に形を変えます。そのほかエネルギーや免疫になったりもします。もしかしたら『気持ち』になったり『考え』になったりするかもしれないですね。
 こう考えると、ものを食べるって事は、生きていく上で一番大事なことなのかもしれないって思います。

 うちの味噌は自家産の無農薬大豆と、無農薬米を使った自家製麹、塩は天然塩を使って仕込んでいます。道楽半分だからここまでできるって気もしますね。
 手作りにこだわれば、きりがなくなります。労力も必要なだけに、やっぱり「作る楽しみ」って部分がないと続かないかもしれません。
 たとえば納豆なんかも作ることがありますけど、労力とできばえを照らし合わせると、やっぱり市販品を買った方がいいかなって思いますし、豆腐なんてのはその手間を考えると、今の農家にはとても手作りしているヒマなんてありません。
 市販のハムやソーセージなんかは、添加物の固まりみたいなもんで、自分で作って食べればいちばんいいのかもしれません。実際作ってみたこともありますが、自分にとってはそんな手間をかけて作るんだったら別に食べなくてもいいってレベルのものでした。
 食べ物が大事だといっても、なんでもかんでもムリしてまで体にいい物を集めたり、貴重な時間をさいて手作りしても続きませんよね。続けるってことが一番大事なんだと思います。それにはやっぱり「楽しみ」って部分も必要ですね。
 体に良いとかじゃなく、ただ「作る楽しみ」のためだけであっても、それを続けることが食べ物のことを考えるきっかけになれば、それでいいんじゃないでしょうか。

(2001年10月)

柿食いたい
秋は柿食う

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