イカが好きなんです。イカが。海にいる、足が10本あるあのイカです。
イカは食卓の王様です。いや、王様ではありません。言い過ぎました。それでもかなりのヤリ手です。いってみれば食卓の遣り手ババアです。これもちがうな。食卓の気前のいいオッチャン・・・う〜ん・・・とにかくイカが大好きなんです。
イカの食べ方ってバラエティーに富んでるじゃないですか。
王道はやっぱり刺身でしょうか。白く、半ば透き通った清らかで美しいその姿。上等の醤油に裾をちょいとぬらして、口に運ぶ。一瞬とろけたようでいて、プリッと強い弾力が歯ぐきに跳ね返ってくる。
淡泊なようでいて、かめばかむほどコクが出る不思議な味わい。冷酒なんかあるとたまりませんな。大葉を一緒に食するのもまた美味。
焼きイカ。これもいいですな。縁日なんかで売っている「ぽっぽ焼き」、丸焼きですな。醤油味で、焼きたてをかぶりつく。プリップリ。たまりません・・・。
焼くといえば一夜干しを焼いたやつはあの香ばしいにおいが何ともいえません日本酒が進む、進む。
煮たのもうまい。ダイコンと一緒に煮たやつなんかいいですね。醤油とワタで味付けて、ご飯が進む、進む。
揚げ物も絶品。特に天ぷら。熱いやつに天つゆじゃなくて醤油をたらして(また醤油かよ)。
イカリングフライなんてのもありますね。冷たくて固くなっているイメージが強いけれど、これがまた乙なもの。
名前が何ともロマンチックじゃないですか「イカリング」なんて。そう思いません?「食卓のロマン・イカリング」なんてどうでしょ?弁当箱の片隅で固くなったやつは「お弁当の哀愁・イカリング」なんてどうでしょ?ロマンチックじゃありませんか?ダメ?
しかし、なんといっても極めつけは「塩辛」。これに尽きます。もちろん自家製でなければいけません。
料理本なんかでは、けっこう手の込んだ作り方をしているものもあるようですが、うちのはただ身を塩とワタでつけ込むだけ、いたってシンプル。これが美味いんです。
忘れてならないのは身がヘナヘナになる前に食べることです。
コクのあるワタをまとった、あくまでなめらかで豊潤なその身はあなたの心に生きている実感と、ほんのりとした幸福の灯をともしてくれるでしょう。
けっしてご馳走にはなれませんが、いつも食卓に小さな幸せを運ぶ、それがイカって野郎なのです。
いわば食卓のザシキワラシといったところですか。(コレモドウカナ?)
(2003年2月)
イカで一杯?