*空を見ようよ*

 田舎の人はよく自分の暮らしているところを「何も無いところだから」といいます。都会の人はそれを真に受けて、「田舎の人は田舎の良さを知らない」とか「自分達が田舎の良さを教えてやろう」とか言うけれど、それは違います。理屈で意識していないだけで、田舎の人間は自分の暮らしているところの良さを十分に知っているし、存分に楽しんでいます。「田舎の人はPRが下手だ」と言われますが、あえて言葉にする必要がないのです。
 「何も無い」というのは、田舎を離れ都会を選んだ人たちが求めたものは「何も無い」といった、いってみれば皮肉を込めた言い回しかもしれません。
 
 私の住んでいる山形県最上地方は、その通り「何も無いところ」。夏はすごく暑く、冬はすごく雪が降る。暮らすにはちょっと厳しい自然環境です。その代わり春と秋がとても美しい。そして自然の恵みがとても豊かです。
 山菜、キノコ、川魚。山、川、土、木、水。
 環境が過酷で暮らしにくいところほど、自然の恵みも豊かということでしょうか。
 その中でも、他のどこよりも美しいと思うのが、空です。このHPの写真で空の比率が高いのはそんなところからです。
 もっとも写真が趣味というわけでもなく、知識も技術もないので実物の空よりはずいぶんスケールダウンしていますが。
 
 ある時本屋をぶらぶらしていて偶然見つけたのが、『雲の言葉』というフォトカードブック。
 空と雲の写真ばかり撮っているHABUさんという写真家の作品です。
 オーストラリアの深く青い空に複雑な色と形の雲、添えられた短い言葉。豊かな表情をもつ雲が言葉を語りかけてくるような、風景写真というよりは心情を風景に映し込んだような写真集で、いっぺんでファンになりました。
 まさしくうちの空も深く青く、雲は言葉を秘めているように表情が豊かです。
 表情豊かな雲は時間の流れに合わせて形を変え、位置を変え、様々な言葉を投げかけてきます。
 日本国中あちこち走り回って、いろんな空を見たけれども、うちで見る空が一番きれいだと感じます。
 旅先で他の目的をもって見る空と、うちで日常の中で見上げる空では、見る側の受け取り方が違っているから、そう感じるのでしょうか。
 皆さんの頭の上の空はどうでしょうか。
 ほかの土地の空よりきれいですか?
 雲は何か言葉を語りかけてくれますか?

(2007年6月)

梅雨の空
梅雨の空にもメッセージが

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