*旅、北海道*

 夏のおわりに北海道に行って来ました。12年ぶりです。
 12年前は道東の方しか回らなかったのでいつかは北の方もと何となく思っていたのが、今年急に思い立ち6日ほどブラブラしてきました。
 目的はとりあえず一番北の端まで行ってみようということだけの行き当たりばったりの旅でした。
 昔はガイドブックをにらみ、めぼしい観光地をピックアップしてコースを設定し、宿を何日も前から予約して・・・というふうだったのが、ここ数年は予定を立てずにふらっと旅に出るようになりました。
 最近は人が集まる観光地よりもどこにでもあるただの町、普通の人たちが普通に暮らしている町をただブラブラと歩くのが好きです。
 目的地の宗谷岬では何をしていたのかというと、丘に登って日が暮れるまでボーっと海を見ていました。岬の民宿に宿を取り、夕食を食べたあとまた岬で霧に煙った海をボーっと見ているという具合。まったく時間の無駄遣い。でもこれが楽しいんだから仕方がない。
 毎日地面にはいつくばって生活していると、時々むしょーにどこか別の土地にいってみたくなるのです。別に何もしなくていいのです。自分の属さないところに身を置くだけで楽しいのです。
 北海道、何が良いって土地そのもの。ただ国道や道道を行くだけで開拓時代を連想させられます。通り過ぎるだけの小さな町にもです。観光地として人気のある美瑛の丘や、富良野の巨大な観光農園にさえそれを感じます。
 都会の人などは北海道の自然が好きだとか思ったりするのかもしれません。12年前の私も霧多布の断崖や、トドワラの荒涼とした風景に感動した覚えがあります。
 今はそれよりも山を切り開いた見渡すかぎりの牧草地や丘の上にぽつんと残された大木、雑草に埋もれ朽ちかけた一軒家などがが好きです。その土地で生活する、あるいは生活した人々の思いを感じます。これは私が農業を生業としているからそう感じるのかもしれません。
 見渡す限りの牧草地にぽつんぽつんと放牧された牛が草を食む。とにかくこの光景を見てしまうと、スーパーで牛乳を買うときでも、ついつい「北海道」なんて書いてあるのに手が伸びてしまう気持ちが分かります。

(1998年11月)

浜頓別あたりの道道を行く
浜頓別あたりの道道を行く

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