*映画館が好きです*

 実は私は映画好きです。三度の食事の次くらいに好きなのです。高校の頃などは、中間テストや期末テストで学校が早く終わると、必ず映画館に行きました。やっぱりビデオよりは映画館が好きです。
 しかし悲しいことに町に三軒あった映画館は、何年も前に全部無くなってしまいました。今はもっぱらCS放送の映画チャンネルで映画を観ています。
 それでも年に何度か、どうしても観たい映画があると、車で一時間以上かけて映画館に足を運びます。何年か前にフレッド・アステアの「イースター・パレード」をリバイバルしたときは、朝早くから出かけて一列目かぶりつきで観てしまいました。私はアステアの映画が大好きで「イースター・パレード」もレーザーディスクで何百回と観ているのに、照明が落ち、目の前のスクリーンにタイトルが浮かび、あのテーマ曲が大音量で流れ出したときには思わず泣きそうになりました。やっぱり映画館が好きです。
 今年に入って劇場では二本しか映画を観ていません。見たい作品があっても時間をかけて遠くまで観に行くのはやっぱり大変です。
 で、その二本というのは、ジョン・ウー監督の「フェイス/オフ」とアッバス・キアロスタミ監督の「桜桃の味」。どちらも大好きな監督の作品です。
 「フェイス/オフ」は全編エネルギーの固まりのような、強力なパワーを持った映画でした。静と動の対比がすばらしく、上映時間二時間十八分がこんなに短く感じた映画は初めてです。
 それから「桜桃の味」。キアロスタミ監督はどうしてこんないい映画を撮ることができるのでしょうか。元々私はせりふの多い映画はあまり好きではないのですが、こんな始めから終わりまでしゃべりっぱなしの映画が、どうしてこんなに面白いのか。この映画にでている人達はみんな素人です。そのせいか一つ一つの言葉に妙な説得力があるのと、それから何といっても監督の力なんでしょうねえ。
 いい映画は劇場で観るとさらに良いです。
 地方の映画館というのはこれからますます減っていってしまうのでしょうが、いい映画はやっぱり劇場で観たい。それが一番です。

(1998年12月)

チャーリー
チャーリー

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